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市川猿翁 (2代目) : ウィキペディア日本語版
市川猿翁 (2代目)[にだいめ いちかわ えんおう]

二代目 市川 猿翁(にだいめ いちかわ えんおう、1939年昭和14年)12月9日 - )は、日本俳優演出家歌舞伎役者。屋号は澤瀉屋定紋澤瀉、替紋は三ツ猿俳名華果(かか)がある。また、紫派藤間流二代目家元として二代目藤間紫を名乗る〔「焦点・日舞紫派藤間流の新体制始動」 読売新聞〕。「猿翁」は隠居名で、49年間にわたって使い続けた三代目 市川 猿之助(さんだいめ いちかわ えんのすけ)としても広く知られる。本名は喜熨斗 政彦(きのし まさひこ)。
慶應義塾大学文学部国文学科卒業。京都造形芸術大学教授を務めていたこともある。
== 来歴・人物 ==
三代目猿之助を襲名後ほどなくして祖父・初代市川猿翁(二代目市川猿之助)と父・三代目市川段四郎を相次いで亡くすという悲運に見舞われる。後ろ盾を失い「梨園の孤児」となりながらも他門の庇護を受けることを潔しとせず、祖父譲りの革新的な芸術志向と上方歌舞伎伝統のケレンとを結びつけることによって歌舞伎界に新風を吹き込んだ。
1968年(昭和43年)『義経千本桜』「四ノ切」で披露した「宙乗り」を皮切りに、明治の演劇改良運動以後は邪道として扱われ顧みられなかったケレンの演出を次々に復活させた「猿之助歌舞伎」で一世を風靡した。猿之助歌舞伎のエンターテインメント性に富む、見応えのある舞台は観客からは高い支持を集めたものの、当初はまだ一般に保守的だった他の歌舞伎役者や劇評家たちからは相手にされないほどの酷評を受けた。十一代目市川團十郎の実弟で、市川宗家の御意見番的存在だった二代目尾上松緑に至っては、この猿之助歌舞伎のことを「喜熨斗サーカス」とまで言い、揶揄している。木下大サーカスを猿之助の本名の「喜熨斗」(きのし)にひっかけたものだが、宗家の連枝とはいえ、別家の役者にそこまで言われるのも、歌舞伎界で孤立無援となった猿之助の悲しさだった〔ただし、二世 尾上松緑は日本舞踊、藤間流勘右衛門派の家元、四世 藤間勘右衛門でもあるため、猿之助の私生活の行いに対して、少なからず感情的にならざるを得なかった事は否めない。〕。
しかし猿之助はそうした逆境を見事に克服する。やがて宙乗りがない従前の演出で上演した「四ノ切」が「つまらない」と不入りになると、七代目尾上菊五郎のような権門家の宗家までもが猿之助版の「四ノ切」を上演しはじめるようになったのである。この宙乗りの演出は元々、猿之助が三代目實川延若から教わったのが最初で、その後「四ノ切」に限らず、近年では後進の歌舞伎役者も多く取り入れており、前述の七代目尾上菊五郎をはじめ、十二代目市川團十郎九代目松本幸四郎十八代目中村勘三郎らも宙乗りの演出を使った公演を行うようになった。
古劇の復活から古典の再創造、スーパー歌舞伎〔スーパー歌舞伎は猿之助が倒れて以降、主に澤瀉屋の門弟筋市川右近二代目市川笑也二代目市川春猿ら)によって継承されている。〕の創造に至るまでの精力的な活動が舞台芸術にひとつの領域を切り開いた。
2003年11月17日、博多座で自身の演出・出演による『西太后』の公演中に体調不良を訴え、降板。この時は「初期の脳梗塞」との診断を受けた、と公表されたが〔47NEWS / 共同ニュース「市川猿之助が急病で代役 脳梗塞の初期症状」(2003/11/18 4:12共同通信配信) 2013年1月16日閲覧)〕、実際にはパーキンソン症候群を発症していた〔NEWSポストセブン「香川照之と父・市川猿之助の三世代同居 すでに破綻していた」(2011年12月8日) 2013年1月16日閲覧)〕。これ以降、俳優として舞台に立つ機会は減り、スーパー歌舞伎や自身の手がけた復活演目の演出面で活動を続けている。2011年9月、二代目市川亀治郎の猿之助襲名会見時に、実子・香川照之と共に8年ぶりに公の場に姿を現した。
2012年6月5日開幕の新橋演舞場での六月大歌舞伎で、二代目 市川猿翁の隠居名を襲名した。
2014年2月1日から2月28日まで日本経済新聞の朝刊「私の履歴書」に連載。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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